A Critical Thinking Reed

学んだことのメモ。考えたことの記録。主に心理学。

心理学

読書時にアンダーラインを引くべきかについて

世の中には「読書術」と呼ばれるものが数多くある。そもそも「誰かの読書術」が自分にも適しているという保証はなく,読書を重ねていく中で自分に合ったものを見つければいいものではある。だが,効率的に内容を理解したり覚えておくためにどうすれば良いの…

勧善懲悪と「公正世界仮説」

(以前出したブログの焼き直しです) abematimes.com www.huffingtonpost.jp どちらも世間を揺るがせた大ニュースである。SNSからメディアまで様々な媒体で広く取り上げられ、大規模なバッシングが起こった。 それぞれの記事から気になった部分を一部引用し…

恋人を欲しいと思わない青年について

これまでの恋愛心理学の研究では「恋人を欲しいと思うのは当然」という認識のもとで,実際の恋人に対する調査が中心に行われてきた。しかし,現代社会においては,恋愛願望が高くない(持たない)青年というのも一定の割合で存在することが指摘されている。…

対立を乗り越える心の実践(読書メモ)③

読んだ本 対立を乗り越える心の実践: 障害者差別にどのように向き合うか? 作者: 栗田季佳,星加良司,岡原正幸 出版社/メーカー: 東京大学出版会 発売日: 2017/02/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 第5章 特別討論〈相模原事件〉の後のこの国で…

対立を乗り越える心の実践(読書メモ)②

読んだ本 対立を乗り越える心の実践: 障害者差別にどのように向き合うか? 作者: 栗田季佳,星加良司,岡原正幸 出版社/メーカー: 東京大学出版会 発売日: 2017/02/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 第3章 生の問題として〈対立を乗り越える〉を…

対立を乗り越える心の実践(読書メモ)①

読んだ本 対立を乗り越える心の実践: 障害者差別にどのように向き合うか? 作者: 栗田季佳,星加良司,岡原正幸 出版社/メーカー: 東京大学出版会 発売日: 2017/02/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 各引用部位の見出しはブログ筆者による。 第1…

対立情報との接触が態度に及ぼす効果

目次 読んだ論文 「対立」の種類 ①「主張」の対立 ②「フレーム」の対立 フレーミングとは 争点フレーミングの対立の例 ③「論証」の対立 異種混交性研究が示す接触効果 競合的フレーミング研究が示す接触効果 態度の極化研究が示す接触効果 態度の極化 バイア…

差別論(4)心理学からみた差別③

目次 読んだ論文 前回までのブログ 共生とは ステレオタイプ・差別・偏見の定義 心理学研究の概観 1.人格心理学的研究 2.社会動機に関する研究 3.認知心理学的研究 4.集団心理学的研究 5.低減に向けた研究 6.葛藤・紛争に関する研究 社会的葛藤 パーソ…

差別論(3)心理学からみた差別②

今回読んだ論文 前回までのブログ 差別・偏見を解消する試み 新たな挑戦 最近の動向 書籍 論文など 今回読んだ論文 池上 知子(2014)差別・偏見研究の変遷と新たな展開.教育心理学年報,53,133-146. 前回までのブログ atsublog.hatenadiary.comatsublog.…

差別論(2)心理学からみた差別①

今回読んだ論文 これまでのブログ 差別・偏見・ステレオタイプの定義 これまでの差別・偏見研究で指摘されてきたこと 人格理論によるアプローチ 集団心理からのアプローチ 認知的アプローチ 現代的差別 無意識レベルに着目して 社会動機的アプローチ 偏見の…

ソーシャルスキルを測定する

なぜ,測定するのか? ソーシャルスキルを測定する目的はいくつか考えられます。一つには「実証的な研究を行うため」というものが挙げられそうですが,「治療やトレーニングのため」という目的もソーシャルスキルの場合には非常に重要な理由の一つです。 ス…

行動遺伝学の倫理

はじめに atsublog.hatenadiary.com このブログの続き。前回は歯切れの悪いところまでしか書けなかったので,今回は別の書籍からもう少し詳しく書いてみたいと思う。 遺伝と環境の心理学―人間行動遺伝学入門 (心理学の世界―専門編) 作者: 安藤寿康 出版社/メ…

行動遺伝学の意義を考える

今回読んだ本 遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である (ちくま新書) 作者: 安藤寿康 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2012/07/01 メディア: 新書 クリック: 19回 この商品を含むブログ (34件) を見る ヒュームの法則 「である」を問題にする事実…

行動遺伝学について考える

今回読んだ本 遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である (ちくま新書) 作者: 安藤寿康 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2012/07/01 メディア: 新書 クリック: 19回 この商品を含むブログ (34件) を見る 行動遺伝学者の安藤寿康氏の書籍である。タイ…

音楽で気分を高揚させる?

音楽で覚醒レベルをコントロールする オッフェンバックの「地獄のオルフェ」やヨハンシュトラウス2世の「トリッチ・トラッチ・ポルカ」などは目覚めをよくする曲として一般に知られています。 (中略) リッターとファーガソン(Ritter, & Ferguson, 2017)…

理科学習における性差

以前に出したブログの焼き直し。 目次 TIMSS(国際数学・理科教育調査)にみる性差 日本の結果 諸外国の傾向 近年の研究にみる性差(情意的側面を中心に) まとめ 参考文献・引用文献 TIMSS(国際数学・理科教育調査)にみる性差 TIMSSとは、IEA(国際教育到…

ソーシャルスキル生起過程モデルについて

目次 定義 概念図 社会的スキーマ 各過程について 「相手の反応の解読」過程 「対人目標の決定」過程 「対人反応の決定」過程 「感情の統制」過程 「対人反応の実行」過程 生起過程モデルの特徴 定義 ソーシャルスキルとは,対人場面において,個人が相手の…

恋愛・性経験に関する社会的規範

Introduction 若尾(2010)は,現代青年が恋愛・性経験に関して2つの「幻想」を抱いていることを指摘している。第1が,同年代の恋愛・性経験の実態に関する誤った認識である。同書によると,現代青年は,同年代の若者の平均的な恋愛・性経験を過大評価して…

ゲシュタルト心理学とノート術への応用

ゲシュタルト心理学 事物の近くが生じるためには,視野の中に異質の領域が形成されて,いわゆる図・地の分化が成立することが必要である。さらに視知覚系の働きによって視野内がいくつかの領域に分離した図は,バラバラのものとしてではなく,まとまりをもっ…

サークル集団への入団理由

今回は、高田(2017)の論文を基に、大学生サークル集団への入団理由とその組織構造との関連について書いてみたい。 サークル集団への入団理由(先行研究) ①活動志向理由(サークル集団の活動を求めて入団する)「活動を楽しみたい」「新しいことを始めたい…

社会的クリティカルシンキング

Walters(1994)の見解 ①クリティカルシンキングの論理性を強調しすぎると,不必要に攻撃的になり,対立を生み出しやすくなる, ②思考するのはそれぞれが異なる考えや経験を持つ人間なので,あらゆる思考に対して完全な客観性を要求することは非現実的である…

批判的思考力の育成にむけて

「批判的思考(Critical Thinking)」が、今後はさらに求められていくように思われるので、2019年最初の記事は、批判的思考力の育成について、道田(2013)の見解を中心に大ざっぱに書いてみたいと思う。 批判的思考力を育成するための3つの問い(道田, 201…

(考察)優生思想と福祉の不可分性

Introduction www.asahi.com 興味深い記述があった。 古市[古市憲寿]は財務省の友人と細かく検討したところ、「お金がかかっているのは終末期医療、特に最後の一ケ月」であることが判明したので、「高齢者に『十年早く死んでくれ』と言うわけじゃなくて、…

素朴概念をめぐって

素朴概念は「理論」?「断片的知識」? 素朴理論の研究者の多くは、素朴概念が「理論」としての整合性を持ち、概念発達には、知識構造の再編を含んでいると考えている。 対して、diSessa(1993)など一部の研究者は、理論として理解することに懐疑的であり、…

認知バイアス(Cognitive Bias)を実例からみる

非常におもしろい記事だったので紹介させて頂きたい。 bunshun.jp 本稿では、ここで紹介されている認知バイアスについて書いてみたい。 目次 1.「認知バイアス」とは 2.セルフ・ハンディキャッピング 3.自己奉仕バイアス 4.非合理的(理性的)エスカレー…

理論と証拠の意識的な調節を起こすために

理論と証拠の意識的な調節 Kuhn(1989)によれば、科学的思考の中心的特徴とされる「理論と証拠の意識的な調節」は、成人においても十分に行えないことを示唆している。 第1に、理論と証拠が一致するとき、両者を明確に区別せず、証拠を評価するように求め…

(考察)フェイクニュース問題をめぐって #2

#2 真実よりも優先されるもの 1.「閉じた関係の中で共鳴」 2017年7月8日(土)の北海道新聞に「フェイクニュースの広がりー閉じた関係の中で共鳴ー」と題された、土井隆義の論考が掲載されていたので一部紹介したい。 1-1 フェイクニュースの特徴 土井は同記…

(考察)フェイクニュース問題をめぐって #1

#1 最近のフェイクニュース事情 最近読んだ記事 その1 AIの軍拡競争が生み出す、人間には簡単に太刀打ちできないフェイクニュースの世界。それに少しでも対抗するには、私たちはこれまで以上に、常識やリテラシーと呼ばれるものに頼るしかないのだろう。 本…

「正常性バイアス」の再考

目次 正常性バイアスとは何か なぜ、人間は正常性バイアスを持つのか? 逃げ遅れの心理としての「正常性バイアス」(一般向けの記事) 正常性バイアスを防ぐために 正常性バイアスの議論を再考する 要約より 3つの前提とその批判 リアリティの共同構築 引用…

「アクティブ・ラーニング」とは

1.アクティブ・ラーニングの定義 文部科学省の定義 教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、 教養、知識、経験…