A Critical Thinking Reed

学んだことのメモ。考えたことの記録。主に心理学。

ゲシュタルト心理学とノート術への応用

ゲシュタルト心理学

事物の近くが生じるためには,視野の中に異質の領域が形成されて,いわゆる図・地の分化が成立することが必要である。さらに視知覚系の働きによって視野内がいくつかの領域に分離した図は,バラバラのものとしてではなく,まとまりをもったもの,体制化されたものとして知覚される.ゲシュタルト心理学者のヴェルトハイマ―(Wertheimer, 1923)は,このまとまりをもたらす体制化ないし 群化の決定要因を明らかにした.

出典:鹿取廣人・杉本敏夫・鳥居修晃 (2015). 心理学[第5版]東京大学出版会,pp.123-125.

群化の要因

近接の要因:空間的、時間的に接近しているものは纏まって見える。
類同の要因:共通の性質をもっているものは、纏まって見える。
共通運命の要因:同一方向へ同じ速さで運動するものは纏まって見える。
よき(良き)連続の要因:方向性の要因で、滑らかに経過を示すものは、纏まって知覚される。
良い形の要因:形の認識の要因で、簡単な図形に見えるよう働く。
閉鎖性(閉合)の要因:輪郭線によって囲まれたものは、纏まり易い。
客観的構えの要因:客観的な、刺激条件によって規定された構えによって、纏まりが規定される。

出典:体制化の法則 - Wikipedia(2019年1月8日 最終確認)

プレグナンツの法則

ゲシュタルト心理学者たちは,このように与えられた条件の許す限り,できるだけ全体を「簡潔なよい形」として知覚する傾向が存在することを見出し、これをプレグナンツの法則(Prägnanzgesetz)と呼んだ。

出典:鹿取廣人・杉本敏夫・鳥居修晃 (2015). 心理学[第5版]東京大学出版会,pp.123-125.

ノート術に活かす

私たちは,情報を塊(かたまり)として見ます。そのため,ノートをとる時にも,関連するものをグループ化してまとめておくと,あとで見る時に一目で関連がわかります。これがグループ化の効果です。

ゲシュタルト心理学における群化法則(情報がまとまって見えるための条件)の中には,近接の要因(近くにある情報はまとまりやすい)や閉合の要因(カッコや枠で閉じられた情報はまとまりやすい)というものがあります。(中略)近接の要因や閉合の要因を活用してノートを作成すれば,後で読み返した時に,すばやく情報を関連づけることができます。

出典:三宮真智子 (2018). メタ認知で〈学ぶ力〉を高める 認知心理学が解き明かす効果的学習法. 北大路書房. pp.83

ノートテイキングに関しては様々なメソッドが指摘されてきました。その多くは論者の個人的経験に基づくものが多いのではないかと思っています。それぞれに合うノートの取り方は異なると思うので、私は一概に「このやり方がよい!」というよりも各々が自分に合ったやり方を模索することが必要だと考えています。しかし、小中学校段階くらいでは多くの場合「黒板をそのまま写す」ことが基本であり、黒板にどのように書くかについては教育者が十分配慮すべきことであると思います。

しかし、科学的で最大公約数的なノートテイキング術がより検証されていくべきだろうということも同時に感じています。教育者の板書術の参考にするために、今回紹介した「ゲシュタルト心理学」の応用は非常に活きるのではないかと思います。近接の要因や閉合の要因はもちろんのこと、例えば類似概念は同じ図形で囲む(類同の要因)ことや、同じ色で書く(類同の要因)など他にも考えることができそうです。