A Critical Thinking Reed

学んだことのメモ。考えたことの記録。主に心理学。

ソーシャルスキル生起過程モデルについて

目次

定義

ソーシャルスキルとは,対人場面において,個人が相手の反応を解読し,それに応じて対人目標と対人反応を決定し,感情を統制したうえで対人反応を実行するまでの循環的な過程である。

出典:相川充. (2009). 新版 人づきあいの技術 社会的スキルの心理学 セレクション社会心理学(20), サイエンス社, 18.

概念図

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出典:相川充. (2009). 新版 人づきあいの技術 社会的スキルの心理学 セレクション社会心理学(20), サイエンス社, 115.

社会的スキーマ

社会的スキーマとは,社会的事象についてのさまざまな知識が体制化され,一つの構造を成している情報群です。 人が社会的事象についての情報を知覚し,記憶した結果できあがったもので,社会的事象についての情報を処理するときや,社会的事象について推論するときの認知的枠組みになります。

出典:相川充. (2009). 新版 人づきあいの技術 社会的スキルの心理学 セレクション社会心理学(20), サイエンス社, 116.

社会的スキーマとして,このモデルでは5つのものが想定されている。 

スキーマ:他者の反応や特性,あるいは他者の行動目標についての知識のまとまり。他者の反応を解釈したり,分類したり,想起したりするのに役立つ。

自己スキーマ:自己についての知識のまとまり。自己に関連する情報の処理に際して,枠組みとして機能する。自己スキーマと合致する情報は容易に処理されるが,合致しない情報は,拒否的に処理される。他者の反応の情報処理にも影響を与える。

役割スキーマ:年代,性別,職業などの社会的役割や社会的カテゴリーについての知識のまとまり。特定の集団に対する判断やステレオタイプ的認知の基礎となる。

出来事スキーマ:ある状況下で生じる社会的出来事の系列についての知識のまとまり。日常生活での定型的な出来事についての知識のまとまりは,とくにスクリプトという。出来事スキーマによって情報の処理は促進され,次の反応の予測が可能となる。

因果スキーマ:物事が生じた原因とその結果に関する認識の枠組み。因果関係に関する過去経験や知識のまとまりである。

出典:相川充. (2009). 新版 人づきあいの技術 社会的スキルの心理学 セレクション社会心理学(20), サイエンス社, 116-117.

各過程について

「相手の反応の解読」過程

相手がこちらに対して実行した対人反応を解読する過程。

(1) 相手が示すさまざまな言語反応,非言語反応を「知覚」
(2) 相手の意図,感情,パーソナリティ,態度などの「解釈」(推論)

「対人目標の決定」過程

相手の反応を解読した結果を受けて,眼前の対人状況にいかに反応すべきか目標を決定する過程。(以前の対人目標を修正する過程。)

「対人反応の決定」過程

対人目標を達成するために,どのような対人反応を用いるべきか決定する過程。 (呈示順序や流れも含めた決定+結果予期&効力予期)

「感情の統制」過程

肯定的な感情,否定的な感情を適度にコントロールする過程

「対人反応の実行」過程

対人目標の達成をめざして決定された対人反応を,言語的,非言語的に実行する過程。 

出典:相川充. (2009). 新版 人づきあいの技術 社会的スキルの心理学 セレクション社会心理学(20), サイエンス社, 120-137.

生起過程モデルの特徴

①認知的な要素の重視
②各過程は一方向に流れていくのではなく,行きつ戻りつしながら進行すると仮定
③対人反応は階層構造を成している(上位反応と下位反応)
④各過程は次第に自動化していく
⑤二種類のフィードバックを仮定(「相手の反応」「対人反応の実行」)
ソーシャルスキルの背後に社会的スキーマを置く

出典:相川充. (2009). 新版 人づきあいの技術 社会的スキルの心理学 セレクション社会心理学(20), サイエンス社, 137-140.