A Critical Thinking Reed

学んだことのメモ。考えたことの記録。主に心理学。

サークル集団への入団理由

今回は、高田(2017)の論文を基に、大学生サークル集団への入団理由とその組織構造との関連について書いてみたい。

サークル集団への入団理由(先行研究)

①活動志向理由(サークル集団の活動を求めて入団する)
「活動を楽しみたい」「新しいことを始めたい」

②成員志向理由(人間関係を求めて入団する)
「大学での人間関係を広げたい」「大学での居場所が欲しい」

こうした知見は、サークル集団の研究(江刺, 1993 など)にとどまらず、集団参加動機の研究(橋爪・高木, 1995)や、集団凝集性(Mullen & Copper, 1994)、PM理論(三隅, 2001)などでも指摘されている。

サークル集団へ入団しない理由(先行研究)

・時間的な拘束や金銭的負担などの,サークル集団における負担感に関する理由
→裏を返すと入団理由には、③「緩さ志向理由」(負担感の低さ)もあると推定。

 

サークル集団への入団理由(高田, 2017)

活動志向理由
「その集団の活動が楽しそうだったから」「その集団で技術や技能を向上させたかったから」

成員志向理由
「大学での人間関係を広めたかったから」「その集団の人たちと仲良くなれそうだったから」

緩さ志向理由
「その集団で気楽に活動ができそうだったから」「その集団の活動が厳しくなさそうだったから」

「緩さ志向理由」という新たな理由が導入された理由として、高田(2017)は2つの点を指摘している。1点目は「希望する集団に入団しやすい(一般的に断られない)」という特徴が関連すると考えられること、2点目は「人と積極的に関わりたくない」という現代青年の特徴が関連すると考えられることである。特に後者は、岡田(2012)が指摘するような「傷つけられることや傷つけることを回避する対人関係」を反映しているものといえると述べている。

サークル集団への入団理由と組織特性・組織属性との相関

活動志向理由は,管理性(r = .160, p < .01),集団フォーマル性(r = .225, p < .01),活動頻度(r= .209, p < .01)と正の相関がみられた。

一方で,成員志向理由ならびに緩さ志向理由は,管理性(r= -.247, p < .01; r = -. 445, p < .01),集団フォーマル性(r = -.258, p < .01; r = -.441, p < .01),活動頻度(r = -.375, p < .01; r = -. 579, p < .01)と負の相関がみられた。

また,成員志向理由開放性と正の相関がみられ(r = .180, p < .01),緩さ志向理由所属人数と負の相関がみられた(r = -.221, p <.01)。

サークル集団の潜在ランク構造

論文中での図を以下に引用させて頂く。

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各潜在ランクの分散分析の結果,ランク1は組織特性・属性ですべての値が低かった。ランク2は,ランク1よりも,開放性管理性集団フォーマル性が高かった。ランク3は,ランク2よりも,管理性集団フォーマル性活動頻度所属人数が多かったが,開放性に差はみられなかった。ラ
ンク4は,ランク3よりも活動頻度が多く,開放性が低かった。

(中略)*1

サークル集団の潜在ランク構造では,ランク1の集団はサークル集団の組織体制が未確立で,所属人数が少ない段階,ランク2の集団はサークル集団の組織体制が確立される段階,ランク3の集団は所属人数が増える段階,ランク4の集団は活動頻度が増える一方で,成員間の関係が低まる段階,という段階的順序が見出された。

潜在ランク構造と入団理由の分析

ランク1の集団に所属する学生は緩さ志向理由を多く選択すると解釈された。ランク2とランク3に所属する学生は,活動志向理由と成員志向理由を多く選択していたが,ランク3に所属する学生の方が,活動志向理由と成員志向理由が強いと解釈された。ランク4に所属する学生は,緩さ志向理由と成員志向理由が弱く,活動志向理由を多く選択すると解釈された。

引用文献

高田治樹. (2017). 大学生サークル集団への入団理由と組織構造との関連. 立教大学心理学研究, 59, 25-40.

コメント

こうした知見を現実に活かしていくことは容易ではないだろうが、まずは自らのサークル集団が本研究で指摘されていた4つのランク構造のうちどこにあたるかを分析し、どのような層の学生を集めたいのかということを考えることで作戦を立てやすくなることが考えられる。もちろんどのランクにどういった形態のサークル(体育系/文化系など)が該当しやすいというのはあるが、必ずしも当てはまるというわけではないので注意が必要だろう。本研究では5つの因子(開放性・管理性・集団フォーマル性・活動頻度・所属人数)で分析されているが、そうした因子について分析することで大まかに段階を把握することができると考えられる。また、現在所属しているメンバーの入団理由を分析することで当該集団に所属しやすい個人属性を把握することもできるかもしれない。

また、本研究では「回顧バイアス」による歪みを減らすために大学1年生のみを対象としているが、それでも、動機づけの要因は後から「説明的に」付与されるケースが多いことには注意する必要がある。すなわち、ロジカルに考えるというよりも「なんとなく」入団する学生が多いのではないかということである。つまり、勧誘する側もロジカルには考えすぎずに「なんとなく入りやすい雰囲気」というものを形成していく必要があると思われる。

*1:本文では、各ランクとサークル集団の形態との関連を検討しており、ランク1が体育会系サークルと文化系部活、ランク2が体育会系サークル、ランク3が文化系サークル、ランク4が体育会系部活が該当しやすいことが示されている。