ソーシャルスキルを測定する
なぜ,測定するのか?
ソーシャルスキルを測定する目的はいくつか考えられます。一つには「実証的な研究を行うため」というものが挙げられそうですが,「治療やトレーニングのため」という目的もソーシャルスキルの場合には非常に重要な理由の一つです。
スクリーニングとアセスメントの問題
〇スクリーニング
・大勢の人の中から治療やトレーニングの対象となる人を見つけ出すために行う測定
・時間をかけずに済む簡便な尺度
・項目数が少なく,本人がチェックできる,簡単な質疑応答で結果が出せるもの
ex. KiSS-18 (菊池, 1988)〇アセスメント
・スクリーニングで引っかかった個人のソーシャルスキルの,どの領域に,どの程度の問題があるのかを測定
・個人特有の問題点を特定でき,記述できる尺度や測度
・測定に時間がかかったり,測定する方にも,される方にも,負担がかかったりする手続き〇課題
・スクリーニング程度の測定しかせずにトレーニングを実施している例
・尺度や測度,測定法がスクリーニングに向いているものなのか,アセスメントに向いているものなのか,意識されていない
何を測定するのか
ソーシャルスキルの定義の仕方によって,測定のされ方も変わることが想定されます。ソーシャルスキル生起過程モデル(相川, 2009)に基づけば,「相手の反応の解読」「対人目標と対人反応の決定」「感情の統制」「対人反応の実行」というように,認知過程から実行過程までそれぞれが測定の対象となります。
・「相手の反応の解読」過程とは,相手がこちらに対して実行した言語的,非言語的な反応を解読する過程
・「対人目標と対人反応の決定」過程とは,眼前の対人状況にいかに反応すべきか目標を決定し,これを達成するための反応を決定する過程
・「感情の統制」過程では,①相手の反応の解読過程で生じる対人情動,②対人目標と対人反応の決定過程に伴う感情,といった情動や感情を適切にコントロールする過程
・「対人反応の実行」過程は,対人反応を,言語的,非言語的に実行する過程。対人反応を①微視的,②巨視的,③力動的の3種類に分類して,整理される。
ソーシャルスキルの主な測定法
他者評定
①面接法:研究者,治療者,トレーナー,カウンセラー,教師などが,測定の対象となる者(対象者)と直接,面談する方法
②行動観察法:対象者にとって自然な状況の中で,対象者の行動を観察する方法
③ロールプレイ法:実際の対人的問題を再現するように工夫された模擬的場面を設定し,その中で対象者に特定の役割(ロール)を与えて,対人反応を実際にやってもらうことで,対象者のソーシャルスキルの程度を測定するもの
④仲間*1による評定
a. 評定尺度法:ソーシャルスキルの行動レベルの特徴が記述されている複数の項目を用いて,仲間が対象者をポイント尺度上で評定するもの
b. ゲス・フー・テスト:一連の行動特徴を記述した項目をあげ,これに該当する人物名を一人または複数,挙げさせる方法
(その他にもソシオメトリック・テストなどが挙げられる)⑤関係者による評定*2による評定
a. 評定尺度法
b. 行動チェックリスト法:発言,微笑,アイコンタクトなどの肯定的行動,たたく,邪魔をする,ケンカをするなどの否定的な行動を列挙しておき,ある一定期間にそのような行動がみられたか測定
c. ランキング法:関係者が集団内における対象者のランクづけを行う(スクリーニング向け)
自己評定
①自己評定尺度法:対象者当人に自己評定用の尺度を手渡し,回答してもらうもの
②自己監視法:日常のできごとを対象者当人に日誌風に記録させる方法
参考文献
人づきあいの技術―ソーシャルスキルの心理学 (セレクション社会心理学)
- 作者: 相川充
- 出版社/メーカー: サイエンス社
- 発売日: 2009/10/01
- メディア: 単行本
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