A Critical Thinking Reed

学んだことのメモ。考えたことの記録。主に心理学。

優生学・優生思想

「科学的な正しさ」の裏にある陥穽

久しぶりに意見系のブログを書くことにした。雑文であることは否めないが,記録として残しておきたい。 gendai.ismedia.jp 「言ってはいけない」「もっと言ってはいけない」といった著書でも話題となっている橘玲氏が,現代ビジネスに寄稿された記事がおもし…

優生学はアクセスの問題?

おもしろい記事を読んだ。 近年の遺伝子工学と優生学についての論考である。かなり示唆に富むような記事だったので、少しばかり書き残しておきたい。 現代社会に根づいた"優生思想" 中国での遺伝子操作ベビーの話は非常に物議をかもした。当然ここまで来るこ…

子どもから見た優生学(メモ)

今回読んだ論文 柴嵜雅子. (2013). 子どもから見た優生学. 国際研究論叢: 大阪国際大学紀要, 27(1), 59-72. 本論文は「子ども」という視点に立った上で「優生学」を論じている。興味深かった視点をここで書き残しておきたい。 旧優生学 ・ナチズムとの同一視…

行動遺伝学の意義を考える

今回読んだ本 遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である (ちくま新書) 作者: 安藤寿康 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2012/07/01 メディア: 新書 クリック: 19回 この商品を含むブログ (34件) を見る ヒュームの法則 「である」を問題にする事実…

行動遺伝学について考える

今回読んだ本 遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である (ちくま新書) 作者: 安藤寿康 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2012/07/01 メディア: 新書 クリック: 19回 この商品を含むブログ (34件) を見る 行動遺伝学者の安藤寿康氏の書籍である。タイ…

知能と遺伝をめぐるおはなし

前回の記事(→遺伝をタブー視する社会の中で - A Critical Thinking Reed) 言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書) 作者: 橘玲 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/04/15 メディア: 新書 この商品を含むブログ (27件) を見る 親の収入と子どもの学…

遺伝をタブー視する社会の中で

多くの書評が出ている橘玲氏の「言ってはいけない 残酷すぎる真実」(新潮新書)。先日読了した。読んだきっかけとメモを書き残しておきたい。 言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書) 作者: 橘玲 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/04/15 メディア…

ドイツ優生学をめぐる議論のメモ

ナチズムの2つの地層 市野川(2000)は,ナチズムには,相互にはっきり分かれる二つの地層があったと指摘している。一つは,ユダヤ人などに対する人種差別と政治的迫害の層,そしてもう一つが強制不妊手術や安楽死をもたらした優生政策の層である。こうした…

社会ダーウィニズムをめぐって

社会ダーウィニズム ダーウィンの生物進化論を適用して社会現象を説明しようとする立場。特にダーウィンの生存競争による最適者生存の理論を誤解ないし拡大解釈して,社会進化における自然淘汰説を導き出そうとする。19世紀末―20世紀初頭にスペンサー,グン…

安楽死をめぐるお話(1)

Introduction メモ安楽死をしたい理由が「迷惑」だから、は"自己決定"とはいえず、欧米では通用しない社会保障の文脈と混ぜて安楽死が議論されてしまうことも踏まえれば、日本で今導入するのは危ないそもそも安楽死と尊厳死も混ざって議論されてる議論の土俵…

優生思想をめぐる研究から学ぶ #2

論文 安藤泰至. (2018). 優生思想と 「別のまなざし」: 宗教・いのち・障害と共に生きること. 宗教と社会貢献, 8(1), 3-23. 優生思想は特殊な人の「思想」か? ①断種 20世紀前半にその研究[ドイツの「人種衛生学」]は世界的に普及するが、そこで「優れた子…

優生思想をめぐる研究から学ぶ #1

論文 安藤泰至. (2018). 優生思想と 「別のまなざし」: 宗教・いのち・障害と共に生きること. 宗教と社会貢献, 8(1), 3-23. 生命倫理問題と「いのちへの問い」 安藤(2018)は、はじめに 「治すための医療」が進展すればするほど、「治すことができない、治…

(考察)優生思想と福祉の不可分性

Introduction www.asahi.com 興味深い記述があった。 古市[古市憲寿]は財務省の友人と細かく検討したところ、「お金がかかっているのは終末期医療、特に最後の一ケ月」であることが判明したので、「高齢者に『十年早く死んでくれ』と言うわけじゃなくて、…

優生思想の歴史(日本)

戦後を中心とした日本における優生思想の変遷を吉岡(2018)をもとに追っていく。 1.戦中の優生政策 2.優生保護法(1948年施行) 3.優生保護法改正による「優生」の規定の強化 4.人工資質向上対策に関する決議(厚生省 1962年7月) 5.不幸な子どもの生…

優生思想の歴史(世界)

世界における優生思想の大まかな歴史を、吉岡(2018)をもとに追っていきたい。 1.優生学の誕生 2.優生学の台頭 3.積極的優生学と消極的優生学 4.ウィンストン・チャーチルの言葉 5.知能検査の開発と利用 6.精神薄弱(知的障害)の断種 7.断種の背景…