A Critical Thinking Reed

学んだことのメモ。考えたことの記録。主に心理学。

「理科を学ぶ目的」とは(雑文)

理科教育関連の集中講義で、毎回と言っていいほど扱われるテーマがある。

「理科を学ぶ目的はなんですかと子どもから聞かれたらどう答えますか?」

という問いである。繰り返し言われるということは、これが理科教育において、はっきりとした答えの出ていない“永遠の課題”であり、なおかつ教師ならば知らないと困るものなのかもしれない。

だが、そうした意識調査の結果が講義の中で取り扱われたことはない。さらっとGoogle Scholar で検索してもほとんど見つからなかった。なんで気になるのに調査しないのか。すごく疑問である。教員相手と生徒相手に小中高大など様々な学年段階に対して意識調査をしたら、面白いと思うんだが。まぁ、資料論文くらいにしかならないか...それでも、理科教育に関わる講義ならどの先生も扱うようなトピックならば、調べていないことの方が不自然である。まぁ,きっと何か事情があるのだろう。

それはさておき、理科を学ぶ目的とは何かということで、しばしば教科教育全般的な目的として指摘されるのが「実質陶冶」と「形式陶冶」のお話である。

実質陶冶(じっしつとうや)
知識・技能などを、実際の生活や生産に即して授け、精神の実質的側面を豊かにはぐくもうとする教育。(デジタル大辞泉

実質陶冶(ジッシツトウヤ)とは - コトバンク

 

形式陶冶(けいしきとうや)
知識・技能を習得する能力そのものをはぐくもうとする教育。観察・注意・記憶・想像・分析などの各能力を高めることに重点を置く。 (デジタル大辞泉

形式陶冶(けいしきとうや)とは - コトバンク 

簡単に言えば「実質陶冶」は,教科関連の「知識・技能」的な側面にあたり,「形式陶冶」は,教科を横断する「能力・態度」的な側面にあたるといえるだろう。ところで,最新の学習指導要領(平成29年改訂版)では,理科で育成する資質・能力として,[1]知識・技能,[2]思考力・判断力・表現力等,[3]学びに向かう力・人間性等が挙げられているが,まさに「実質陶冶」的な側面と「形式陶冶」的な側面が出ている。「実質陶冶」と「形式陶冶」は車の両輪のようなもので,どちらかが欠けても車は走らない。両方をバランスよく行っていく必要があるのだろう。

さて,理科という科目を学ぶことのメリットは何だろうか。実は,こうしたメリットについて整理するにあたって,先ほどの学習指導要領で紹介されていた「理科で育成する資質・能力」は非常に大きな示唆を与える。もっとはっきりと言えば,理科を学ぶ目的はずばり「(理科で育成する」資質・能力を身につけるため」なのである。

ざっくり思いついたものを書いておきたい。分類は勝手にしたので,おかしいところなどもあるかもしれないがご容赦頂きたい。

【1】知識・技能

・自分の身を守るための正しい知識を身につける
・問題を発見する技能の習得
疑似科学にだまされない知識
・季節感の獲得

【2】思考力・判断力・表現力等

・科学的に「考える力」の習得(客観的・実証的・論理的・体系的)
・ものごとの普遍性を発見する能力

【3】学びに向かう力・人間性

・日常生活に対して「疑問」を持つ態度(批判的思考態度)
・新しい概念を導入する態度
・知的探求心の習得

【4】その他

・科学者の養成,理科教員の養成
・受験で使うから

むしろ,理科は割と好きだった自分にとってこれほど難しいトピックはない。逆に,理科が嫌いな人の意見を聞いた方が参考になりそうな気すらしてくる。

まぁ,どうせこれからも考え続けるトピックなのだろうから,今後もこのブログは書き換え続けたいと思う。