A Critical Thinking Reed

学んだことのメモ。考えたことの記録。主に心理学。

部活動と合理性神話 / 職業と教育社会学

今回読んだ本

半径5メートルからの教育社会学 (大学生の学びをつくる)

半径5メートルからの教育社会学 (大学生の学びをつくる)

 

第8章「部活動は学校において合理的な活動か?」より

部活動の合理性

・部活動には文化的経験の機会保障という面での合理性がある

・「激しい指導(行き過ぎた指導)」という事例からは,機会保障面での合理性のみでないことが読みとれる

・教員の負担という観点からみれば不合理な活動

組織社会学の視座

官僚制

〇官僚制の特徴(ウェーバー
・規則により権限や義務が定められている
・官庁間での階層構造
・文書による職務執行
・専門的な訓練の必要性
・職員が専業であること など

〇官僚制の非合理性
・官僚制の逆機能(マートン
「もともと規則を守ることは一つの手段だと考えられていたのに,それが一つの自己目的に変わる」(本来の目的よりも手段の重視)

・学校では,効率的に教育を提供しようとするシステムが,一定の秩序を児童生徒に押しつけてしまう危険もはらんでいる

制度理論と合理性神

・制度理論では,組織における恒常的で反復される生活は,諸個人の自己利害にもとづく計算された行為からではなく,「ものごとのあり方,あるいは,ものごとがなされるべき方法」として,適切である,自明であると認識されることから生じると論じられる」

・合理性神話(マイヤー)
一見,合理的・効率的に見える組織行動は,実際に合理的・効率的であるとは限らないが,当該の組織行動が合理的・効率的だとする社会的な合意は存在する。こうした社会的合意を「神話」と表現した。こうした神話のおかげで,官僚制は正当性を得て多くの組織で採用された。

・学校も合理性神話を利用し,効率よく自らの教育の有効性を主張することができる

・組織の「合理性」≠実質的な効果のあるもの 

部活動の”合理性神話”

・戦後の部活動は,民主主義的に「合理的な」活動として出発。その後,東京五輪期には,選手養成の場としての「合理性」や,平等な文化的意義の保障という「合理性」が高まり(対立し),その後は再び民主主義的な「合理性」が台頭した。高度成長期以降は管理主義的な「合理性」が見いだされるようになった。

・このように,さまざまなかたちで部活動を「合理的」とみなす見方が生まれたことで,部活動は今日まで拡大してきた。

・「文武両道」を謳う進学校が多いのも,それが優れた教育実践であるという「合理性神話」によるもの。

 

第10章「教育から職業への移行と就職活動」より

社会人基礎力

「社会人基礎力」とは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱しました。

人生100年時代」や「第四次産業革命」の下で、2006年に発表した「社会人基礎力」はむしろその重要性を増しており、有効ですが、「人生100年時代」ならではの切り口・視点が必要となっていました。

こうした状況を踏まえ、平成29年度に開催した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」において、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義しました。社会人基礎力の3つの能力/12の能力要素を内容としつつ、能力を発揮するにあたって、自己を認識してリフレクション(振り返り)しながら、目的、学び、統合のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置づけられます。

参考リンク
社会人基礎力(METI/経済産業省)
経済産業省「人生100年時代の社会人基礎力について」

ハイパー・メリトクラシー社会の問題

〇ハイパー・メリトクラシー(本田, 2005)
・意欲やコミュニケーション能力,「人間力」といった個人の人格に類する要素をも能力とみなし,就労にあたり重要視する社会

・学校での育成が難しく,家庭環境も大きく影響するため,格差や不平等の正当化につながるリスク

・キャリア教育の「自分で考えて自分で決めよ」というメッセージは,進路不安を招いており,抽象的なキャリア教育ではなく職業に関する専門的な知識を教えるなど,教育の職業的意義の重要性を本田(2009)は主張している。

コミュニケーション能力を職業の関連として教える問題点

①意欲やコミュニケーション能力を,個人の「能力」に還元することで,社会的な不平等が見えにくくなる

・教育や家庭の環境,性別といった「社会的に平等とは言えない差」によって受ける影響を考慮していない

②仕事に対する意欲が労働環境の悪さを覆い隠す可能性

・「仕事に対する意欲を持つべき」という規範は,かえって劣悪な労働環境に人を適応させてしまう可能性がある