A Critical Thinking Reed

学んだことのメモ。考えたことの記録。主に心理学。

友だち幻想(読書メモ)②

読んだ本

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

 

第4章

「ルール関係」と「フィーリング共有関係」

・ルール関係:他者と共存していくときに,お互いに最低守らなければならないルールを基本に成立する関係
・フィーリング共有関係:フィーリングを一緒にして,同じようなノリで同じように頑張る関係
・「ルール関係」と「フィーリング共有関係」を区別して考え,使い分けができるようになること。これが,「大人になる」ということにとっての,一つの大切な課題

 

ルールをめぐって

・なるべく多くの人が,最大限の自由を得られる目的で設定されるのがルール
・自由はルールがないところでは成立しない
・“人を殺さない,人から盗まない” というルールは,“人に殺されない,人から盗まれない” ことを保障するために必要なもの(→自分の身の安全を守るために,他者の身の安全も守る)
・ルールを決めるときは,どうしてもこれだけは必要というものに絞り込むこと,「ルールのミニマム性」というものを絶えず意識することが重要

 

「並存性」

・全員が気の合う仲間どうしであるということは,現実的に不可能
・「親しさか,敵対か」の二者択一ではなく,態度保留という真ん中の道を選ぶ

第5章

教育をめぐる「幻想」

・「生徒の記憶に残るようなりっぱな先生をめざすことはない」
→生徒の記憶に残ることを求めすぎると,過剰な精神的関与や自分の信念の押し付けに走ってしまう恐れがある
→生徒の意識に一生消えないような嫌な記憶を残すような先生にだけはならないことの方が,よっぽど本質的で大切なこと

・先生は,基本的には自分がわかってもらえなくてもいいくらいの覚悟が必要→生徒たちに自分の熱い思いや教育方針を注入するよりも,自分の教室が一つの社会として最低限のルール性を保持できているようにする

・先生は,自分が帯びてしまう影響力の大きさと自分の影響力の責任の限界を,同時に見据えるクールな意識を持つことが求められている

第6章

「定位家族」と「生殖家族」

・定位家族:人間としての「方向づけ」がなされる家族。自分が生まれ落とされた家族
・生殖家族:新しく結婚して,そして子どもを作っていく家族

・親子は,他者性ゼロからスタートして,やがて少しずつ他者性をお互いに認めるような方向に行かざるを得ない。
・親の子に対する「包摂志向」(親が子どもを包み込みたいという心理)と,子の親に対する「自立志向」(親から自立しようという心理)というもののぶつかり合いが,思春期から青年期にかけて起こる(→反抗期)

 

大人になるために

・大人になるとは...「経済的自立」「精神的自立」(=「自分の欲求のコントロール」+「自分の行いに対する責任の意識」)「人間関係の引き受け方の成熟度」
・大人になるために必要なこと...「気の合わない人間とも並存しなければならない」「君にはこういう限界がある」
→「オレ様化する子どもたち」(優れた人間の足を引っ張ろうとする)
→人生の「苦味」を味わうことを通して味わう「うま味」というものを経験できるようになることこそが,大人になるということ

第7章

・ある程度のルール性をふまえた上での,あるいは先生と生徒ということを意識した上での親密性の作り方が,いまの若い人たちはとても苦手

・人との関係を作っていきたい,つながりたいという積極的な思いが一方であり,でもやっぱり傷つくのはいやだといった消極的な恐れ感情もある

・親友にしても,恋人にしても,まるごとすべて受け入れてくれてるわけではないんだけれども,自分のことをしっかり理解しようとしてくれている人と出会うーーそういうレベルで,私たちは他者を求め,しっかりと向き合って関係を深めていけることが,現実世界で〈生のあじわい〉を深めていくためには必要 

 第8章

「コミュニケーション阻害語」

①「ムカつく」「うざい」:異質なものと折り合おうとする意欲を即座に遮断してしまう言葉,攻撃の言葉,根拠もなく感情のままに言える
→主観的な心情を簡単に発露できてしまうほど,社会のルール性がゆるくなってしまった

②「ていうか」:うわべだけ会話をつなげていくマジック・ワード

「チョー」「カワイイ」「ヤバい」:物事に対する繊細で微妙な感受能力が奪われてしまう危険性

④「キャラがかぶる」「KY」:あまりに周りに合わせようとする振る舞い方は,人とのつながりのなかで自分自身を疲れ果てさせてしまう危険

 

読書は「対話」

・本を読むことの本質は,筆者との「対話」

・①今ここにいない人と対話して,情緒の深度を深めていける。②くり返し読み直したりすることによって自分が納得するまで時間をかけ理解を深めることができる。③いろいろな性格の人と比較的楽に対話することができる。少しずつ自分の感じ方や考え方を作り替えていくことができる。

 

本当の「楽しさ」

ラクして得られる楽しさは,タカが知れていて,むしろ苦しいことを通して初めて得られる楽しさのほうが大きいことがよくある

・他者への恐れの感覚や自分を表現することの恐れを多少乗り越えて,少々苦労して人とゴツゴツぶつかりあいながらも理解を深めていくことによって,「この人と付き合えて本当によかったな」という思いを込めて,人とつながることができるようになると思う