A Critical Thinking Reed

学んだことのメモ。考えたことの記録。主に心理学。

友だち幻想(読書メモ)①

読んだ本

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

 

第1章

本書のテーマ

現代社会において基本的に人間は経済的条件と身体的条件がそろえば,一人で生きていくことも不可能ではない。しかし,大丈夫,一人で生きていると思い込んでいても,人はどこかで必ず他の人々とのつながりを求めがちになるだろう

・ムラ的な伝統的作法では,家庭や学校や職場において,さまざまに多様で異質な生活形態や価値観をもった人びとが隣り合って暮らしている「いまの時代」にフィットしない面が,いろいろ出てきてしまっている

・共同体的な凝集された親しさという関係から離れて,もう少し人と人との距離感を丁寧に見つめ直したり,気の合わない人とでも一緒にいる作法というものをきちんと考えたほうがよい

第2章

二種類の「つながり」

①目的が「つながりの外」にある場合(人とつながる,つまり人間関係を作ることによって,自分にとっての利得や利益といったものを得ようとする場合)
②人とつながることそのものが目的であるような場合→「交流」

 

幸福のモメント

①自己充実(自己実現):自分が能力を最大限発揮する場を得て,やりたいことができる
②他者との交流:(i)「交流」そのものの歓び,(ii) 他者からの「承認」(相互承認)

 

「他者」について

・「他者」とは自分以外のすべての人間
・二種類の他者:(i)「見知らぬ他者」(≒他人),(ii)「身近な他者」
・どんなに気の合う,信頼できる,心を許せる人間でも,やはり自分とは違う価値観や感じ方を持っている(「異質性」を持った他者である)

 

他者の二重性

①「脅威の源泉」としての他者
②「生のあじわい」(エロスの源泉)としての他者
→人は,他者のもつこの二重性に,常に振り回されるもの

第3章

スケープゴート

・人々の憎悪や不安,猜疑心などを,一つの対象(個人や集団)に転嫁して,矛先をそちらにそらせてしまうこと
・第三者を排除することによって,その場の「あなたと私の親しさを確認しあう」
→今度はいつ自分が排除されるか分からない(不安の増幅)+情報共有に対する「不安」(緊張した状態で一緒にいる)
→ますます固まる

 

同調圧力

本当は幸せになるための「友だち」「親しさ」のはずなのに,その存在が逆に自分を息苦しくしたり,相手も息苦しくなっていたりするような,妙な関係が生まれてしまうことがある

 

ネオ共同性(現代における「新たな共同性」への圧力)

・ムラ的(伝統的)共同性の根拠は「生命維持」の相互性
・ネオ共同性の根拠は「不安」の相互性

 

社会的性格(リースマン)

・伝統指向型(自分の主体的な判断や良心ではなく,外面的権威や恥の意識にしたがって行動の基準を決める)→ムラ的共同性
・内部指向型(自分の内面に「心の羅針盤」を持ってその基準に照らして自分の行動をコントロールする)
・他人指向型(自分の行動の基準を他人=他者との同調性に求める)→ネオ共同性

 

二重の共同性

・生活の基盤をつくる人びとの〈つながり〉が,直接的に目に見える人たちへの「直接的依存関係」から,貨幣と物を媒介にして目に見えない多くの人たちへの「間接的依存関係」へと変質した(「同質的共同性」から「抽象的共同性」への転換?)
・人びとは一方で個性や自由を獲得し,人それぞれの能力や欲望の可能性を追求することが許されているはずなのに,もう片方でみんな同じなければならないという同調圧力の下に置かれている

 

あえて「離れる」

・自分がルサンチマンの感情(「恨み,反感,嫉妬」といった,いわば人間誰もが抱きうる「負の感情」)に囚われがちなときは「自分は自分,人は人だ」という,ちょっと突き放したようなものの見方をしたほうがいい
・お互いにうまくいく関係というのは,その距離の感覚がお互いどうし一致していて,ちょうどいい関係になっている→適切な距離は人によって違う