A Critical Thinking Reed

学んだことのメモ。考えたことの記録。主に心理学。

共生社会への希求

今回読んだ本 共生の現代的探求―生あるものは共にある 作者: 竹内貞雄,重本直利 出版社/メーカー: 晃洋書房 発売日: 2015/03/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「共生」に関する本を読んでみたいと思って手に取ったのだが,学のない私には難…

差別論(1)差別の定義をめぐって

差別の定義(佐藤, 2005) ・「差別」という言葉には両立不可能な2つのイメージが存在している ①差異モデル「A と B を差別する」といったように、差別を基本的に「異なる扱い」であるとイメージし、2つの異なる集団(社会的カテゴリー)の比較によって差…

2019年1月の記事

目次 優生学・優生思想 行動遺伝学 教育社会学 批判的思考(Critical Thinking) 統計(潜在ランク理論) その他(心理学) 優生学・優生思想 行動遺伝学 教育社会学 批判的思考(Critical Thinking) 統計(潜在ランク理論) その他(心理学)

部活動と合理性神話 / 職業と教育社会学

今回読んだ本 半径5メートルからの教育社会学 (大学生の学びをつくる) 作者: 片山悠樹,内田良,古田和久,牧野智和 出版社/メーカー: 大月書店 発売日: 2017/09/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 第8章「部活動は学校において合理的な…

ソーシャルスキルを測定する

なぜ,測定するのか? ソーシャルスキルを測定する目的はいくつか考えられます。一つには「実証的な研究を行うため」というものが挙げられそうですが,「治療やトレーニングのため」という目的もソーシャルスキルの場合には非常に重要な理由の一つです。 ス…

少年犯罪とその報道に対する視点

今回読んだ本 半径5メートルからの教育社会学 (大学生の学びをつくる) 作者: 片山悠樹,内田良,古田和久,牧野智和 出版社/メーカー: 大月書店 発売日: 2017/09/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 12章「少年犯罪についての認識とメディ…

優生学はアクセスの問題?

おもしろい記事を読んだ。 近年の遺伝子工学と優生学についての論考である。かなり示唆に富むような記事だったので、少しばかり書き残しておきたい。 現代社会に根づいた"優生思想" 中国での遺伝子操作ベビーの話は非常に物議をかもした。当然ここまで来るこ…

いじめ問題をめぐる社会学の視点

今回読んだ本 半径5メートルからの教育社会学 (大学生の学びをつくる) 作者: 片山悠樹,内田良,古田和久,牧野智和 出版社/メーカー: 大月書店 発売日: 2017/09/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 第11章「いじめ」問題がつくる視角と死…

『社会生物学の勝利』より(メモ)

今回読んだ本 社会生物学の勝利―批判者たちはどこで誤ったか 作者: ジョンオルコック,John Alcock,長谷川真理子 出版社/メーカー: 新曜社 発売日: 2004/01 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 35回 この商品を含むブログ (11件) を見る 題名はなかなか偏…

学校での体罰・暴力問題を考えるために

はじめに 町田総合高校で起こった体罰事件については以前ブログにて意見を表明した。atsublog.hatenadiary.com 世間の注目は(予想通りではあるが)少しずつ下火になり,生徒に対してどのような指導が行われたのか,再発防止のためにどのような取り組みが行…

子どもから見た優生学(メモ)

今回読んだ論文 柴嵜雅子. (2013). 子どもから見た優生学. 国際研究論叢: 大阪国際大学紀要, 27(1), 59-72. 本論文は「子ども」という視点に立った上で「優生学」を論じている。興味深かった視点をここで書き残しておきたい。 旧優生学 ・ナチズムとの同一視…

行動遺伝学の倫理

はじめに atsublog.hatenadiary.com このブログの続き。前回は歯切れの悪いところまでしか書けなかったので,今回は別の書籍からもう少し詳しく書いてみたいと思う。 遺伝と環境の心理学―人間行動遺伝学入門 (心理学の世界―専門編) 作者: 安藤寿康 出版社/メ…

行動遺伝学の教科書から学ぶ

はじめに 行動遺伝学入門―動物とヒトの“こころ”の科学 作者: 小出剛,山元大輔 出版社/メーカー: 裳華房 発売日: 2011/11/01 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 29回 この商品を含むブログを見る 最近は行動遺伝学の倫理問題に目を向けているわけだが,行…

体罰事件について思う2つのこと(雑文)

https://mainichi.jp/articles/20190118/k00/00m/040/210000c 都立町田総合高校で教員が体罰 ネットで動画拡散 - 産経ニュース 404 Not Found 東京都立町田総合高校で起こった体罰事件。「体罰」と聞いてしまうと教員が責められるのがこれまでの常だったわけ…

行動遺伝学の意義を考える

今回読んだ本 遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である (ちくま新書) 作者: 安藤寿康 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2012/07/01 メディア: 新書 クリック: 19回 この商品を含むブログ (34件) を見る ヒュームの法則 「である」を問題にする事実…

行動遺伝学について考える

今回読んだ本 遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である (ちくま新書) 作者: 安藤寿康 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2012/07/01 メディア: 新書 クリック: 19回 この商品を含むブログ (34件) を見る 行動遺伝学者の安藤寿康氏の書籍である。タイ…

Intellectual Dark Web の記事を読んで(雑文)

Intellectual Dark Web gendai.ismedia.jp 面白い記事があがっていた。 I.D.Wの唱える「不都合な現実」、それはたとえば、ジェンダーや人種の根底にある生物学的あるいは遺伝学的差異である。 彼らによれば、科学データに基づいてジェンダーや人種の差異につ…

音楽で気分を高揚させる?

音楽で覚醒レベルをコントロールする オッフェンバックの「地獄のオルフェ」やヨハンシュトラウス2世の「トリッチ・トラッチ・ポルカ」などは目覚めをよくする曲として一般に知られています。 (中略) リッターとファーガソン(Ritter, & Ferguson, 2017)…

理科学習における性差

以前に出したブログの焼き直し。 目次 TIMSS(国際数学・理科教育調査)にみる性差 日本の結果 諸外国の傾向 近年の研究にみる性差(情意的側面を中心に) まとめ 参考文献・引用文献 TIMSS(国際数学・理科教育調査)にみる性差 TIMSSとは、IEA(国際教育到…

知能と遺伝をめぐるおはなし

前回の記事(→遺伝をタブー視する社会の中で - A Critical Thinking Reed) 言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書) 作者: 橘玲 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/04/15 メディア: 新書 この商品を含むブログ (27件) を見る 親の収入と子どもの学…

遺伝をタブー視する社会の中で

多くの書評が出ている橘玲氏の「言ってはいけない 残酷すぎる真実」(新潮新書)。先日読了した。読んだきっかけとメモを書き残しておきたい。 言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書) 作者: 橘玲 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/04/15 メディア…

ドイツ優生学をめぐる議論のメモ

ナチズムの2つの地層 市野川(2000)は,ナチズムには,相互にはっきり分かれる二つの地層があったと指摘している。一つは,ユダヤ人などに対する人種差別と政治的迫害の層,そしてもう一つが強制不妊手術や安楽死をもたらした優生政策の層である。こうした…

社会ダーウィニズムをめぐって

社会ダーウィニズム ダーウィンの生物進化論を適用して社会現象を説明しようとする立場。特にダーウィンの生存競争による最適者生存の理論を誤解ないし拡大解釈して,社会進化における自然淘汰説を導き出そうとする。19世紀末―20世紀初頭にスペンサー,グン…

ソーシャルスキル生起過程モデルについて

目次 定義 概念図 社会的スキーマ 各過程について 「相手の反応の解読」過程 「対人目標の決定」過程 「対人反応の決定」過程 「感情の統制」過程 「対人反応の実行」過程 生起過程モデルの特徴 定義 ソーシャルスキルとは,対人場面において,個人が相手の…

恋愛・性経験に関する社会的規範

Introduction 若尾(2010)は,現代青年が恋愛・性経験に関して2つの「幻想」を抱いていることを指摘している。第1が,同年代の恋愛・性経験の実態に関する誤った認識である。同書によると,現代青年は,同年代の若者の平均的な恋愛・性経験を過大評価して…

ゲシュタルト心理学とノート術への応用

ゲシュタルト心理学 事物の近くが生じるためには,視野の中に異質の領域が形成されて,いわゆる図・地の分化が成立することが必要である。さらに視知覚系の働きによって視野内がいくつかの領域に分離した図は,バラバラのものとしてではなく,まとまりをもっ…

安楽死をめぐるお話(1)

Introduction メモ安楽死をしたい理由が「迷惑」だから、は"自己決定"とはいえず、欧米では通用しない社会保障の文脈と混ぜて安楽死が議論されてしまうことも踏まえれば、日本で今導入するのは危ないそもそも安楽死と尊厳死も混ざって議論されてる議論の土俵…

サークル集団への入団理由

今回は、高田(2017)の論文を基に、大学生サークル集団への入団理由とその組織構造との関連について書いてみたい。 サークル集団への入団理由(先行研究) ①活動志向理由(サークル集団の活動を求めて入団する)「活動を楽しみたい」「新しいことを始めたい…

社会的クリティカルシンキング

Walters(1994)の見解 ①クリティカルシンキングの論理性を強調しすぎると,不必要に攻撃的になり,対立を生み出しやすくなる, ②思考するのはそれぞれが異なる考えや経験を持つ人間なので,あらゆる思考に対して完全な客観性を要求することは非現実的である…

潜在ランク理論について #2

Google scholarで「潜在ランク理論」と検索すると、62件。「Latent rank theory」と検索しても、71件。まだまだ使用の多い統計手法とは言えないが、この統計モデルは、清水裕士氏の言葉を借りれば「現場で使いやすい段階評価を可能にする,実践的統計モデル…